器を愛でる
2021.12.15 22:43|好きなこと|
佐世保からの帰り道、有田の骨董店『椋露地』に立ち寄った。
こちらは今年の初め頃、欠けたままになっている大切な器を金継ぎしてくれる所を探していて見つけたお店だ。
ずっと行きたいと思っていたのだけれど、なにぶん離れているため結局一年近くが経ってしまった。
佐世保大塔ICから高速に乗り、波佐見有田ICで下りたら窯元が点在する有田のひなびた町中を進む。
唐子の器でおなじみの三河内、波佐見、有田は地理的に大変近く、器好きに時間がいくらあっても足りない地域だ。
次回はゆっくり時間を取って大川内山の町並みなどを見て回りたい。

看板がなければ絶対に辿り着けない小高い山のてっぺんにお店はあった。ガラス越しに素敵な器の数々が見える。
が、ドアが閉まっておりお留守のよう。諦めて帰ろうとしたところへ、ご主人が戻って来られた。
『うちは常連さんばかりで、みなさん電話をかけて来るんですよ。次お越しの際は携帯にお電話下さい』とのこと。
近所の庄屋さんのお屋敷の解体とお宝発掘作業?から戻られたところだそうで、物品は古物商を集めて競売に
かけられるという。古物商の世界もシビアである。
絢爛豪華な色絵に染付。目利きの店主選りすぐりの品が並び、私には手が出ない値段がついている。
内心冷や汗をかきつつ見て回ると、中央の棚には手の届きそうな値のついた商品があった。新品も半値で取り扱っている。
手描きの桜が愛らしい小さなティーカップのセットに目を奪われ、思わず手に取って熱視線を注いでいる私にご主人が、
『それ、いいでしょう。辻精磁社といって深川製磁と香蘭社に並ぶ由緒ある窯ですよ。
皇室御用達で、宮中晩餐会で使うこういう大皿を作っていた名窯です』と50㎝はあろうかという大皿を見せてくれる。
『すごく素敵ですね・・・、あの、これはお幾らでしょうか』と恐る恐る尋ねてみた。
『値段がついていないのは最近仕入れたやつで、えーとね。それは5千円ですね』
『ご、ごせんえんですか(どうしよう、ガソリン入れたら高速代残らないかも・・・)』
私の懊悩を知ってか知らずかご主人はさらに、
『辻精磁社は熱心なコレクターもいてね。出たらなかなか残らないんですよ』てな事を言って私を焦らせる。
1500円の深川製磁の楕円皿と800円のエビ柄の小鉢を握りしめたまま、桜の柄のティーセットを血走った目で凝視する私に
鬼気迫るものを感じたのか、『それ、欲しいですか?なら今手に持たれてるお皿2枚と合わせて6千円でいいですよ』
ここまで言われて買わなきゃ真の器好きじゃねぇ
と最終的にご主人のお申し出を有り難く受けることにした。
ご主人がお留守だったら出会えなかった器達。今日巡り会えたのも何かの縁。何事もご縁である。

(左)辻精磁社のティーカップとソーサー。カップが2個でソーサーは1枚。(右)エビの絵の小鉢。

大正時代の深川製磁の楕円皿。縁に描かれた雪の結晶が素敵。
3個の器は助手席に乗せて大切に持ち帰った。
これから料理を考えるのが楽しみだ。
こちらは今年の初め頃、欠けたままになっている大切な器を金継ぎしてくれる所を探していて見つけたお店だ。
ずっと行きたいと思っていたのだけれど、なにぶん離れているため結局一年近くが経ってしまった。
佐世保大塔ICから高速に乗り、波佐見有田ICで下りたら窯元が点在する有田のひなびた町中を進む。
唐子の器でおなじみの三河内、波佐見、有田は地理的に大変近く、器好きに時間がいくらあっても足りない地域だ。
次回はゆっくり時間を取って大川内山の町並みなどを見て回りたい。




看板がなければ絶対に辿り着けない小高い山のてっぺんにお店はあった。ガラス越しに素敵な器の数々が見える。
が、ドアが閉まっておりお留守のよう。諦めて帰ろうとしたところへ、ご主人が戻って来られた。
『うちは常連さんばかりで、みなさん電話をかけて来るんですよ。次お越しの際は携帯にお電話下さい』とのこと。
近所の庄屋さんのお屋敷の解体とお宝発掘作業?から戻られたところだそうで、物品は古物商を集めて競売に
かけられるという。古物商の世界もシビアである。
絢爛豪華な色絵に染付。目利きの店主選りすぐりの品が並び、私には手が出ない値段がついている。
内心冷や汗をかきつつ見て回ると、中央の棚には手の届きそうな値のついた商品があった。新品も半値で取り扱っている。
手描きの桜が愛らしい小さなティーカップのセットに目を奪われ、思わず手に取って熱視線を注いでいる私にご主人が、
『それ、いいでしょう。辻精磁社といって深川製磁と香蘭社に並ぶ由緒ある窯ですよ。
皇室御用達で、宮中晩餐会で使うこういう大皿を作っていた名窯です』と50㎝はあろうかという大皿を見せてくれる。
『すごく素敵ですね・・・、あの、これはお幾らでしょうか』と恐る恐る尋ねてみた。
『値段がついていないのは最近仕入れたやつで、えーとね。それは5千円ですね』
『ご、ごせんえんですか(どうしよう、ガソリン入れたら高速代残らないかも・・・)』
私の懊悩を知ってか知らずかご主人はさらに、
『辻精磁社は熱心なコレクターもいてね。出たらなかなか残らないんですよ』てな事を言って私を焦らせる。
1500円の深川製磁の楕円皿と800円のエビ柄の小鉢を握りしめたまま、桜の柄のティーセットを血走った目で凝視する私に
鬼気迫るものを感じたのか、『それ、欲しいですか?なら今手に持たれてるお皿2枚と合わせて6千円でいいですよ』
ここまで言われて買わなきゃ真の器好きじゃねぇ

ご主人がお留守だったら出会えなかった器達。今日巡り会えたのも何かの縁。何事もご縁である。


(左)辻精磁社のティーカップとソーサー。カップが2個でソーサーは1枚。(右)エビの絵の小鉢。


大正時代の深川製磁の楕円皿。縁に描かれた雪の結晶が素敵。
3個の器は助手席に乗せて大切に持ち帰った。
これから料理を考えるのが楽しみだ。