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高峰秀子『わたしの渡世日記』

2020.03.07 21:31|好きなこと
昼休みにチビチビ読んでいた高峰秀子の自伝を読み終えました。

高峰さんの映画は観たことがないのですが、”日本映画史上、最高の大女優・名女優として評価される存在”(Wikipedia)
と呼ばれているのを知り、すごい方だったんだなぁと。日本映画の揺籃期から第一線で映画界を見てきた方なので、
日本の映画史を語る上で欠かせない名前が次々に登場します。黒澤明や三船敏郎、小津安二郎に木下恵介など。
そんな中で最もページを割かれていたのは、最愛の夫君、松山善三氏と出会うきっかけともなり、お二人の結婚の
仲人もつとめた”天才”木下恵介監督との数々の挿話。同性愛者であり、冷徹な目で女を描き続けた木下監督でしたが、
高峰さんの事は人間としても女優としても心から信頼していたようです。

上巻は戦前から子役として活躍した高峰さんのいわば青春編。戦争史として読んでもいいくらい勉強になる内容で、
上巻の個人的ハイライトは巻末部分、特攻隊基地へ慰問に行った時のお話です。

特攻隊慰問では、フィナーレに「同期の桜」を合唱する。まだ少年としか言いようのない紅顔の特攻隊員は、
舞台の私達と一緒に歌った。この人々の行く手に待っているのは、確実な「死」である。(中略)私は二十一歳だった。
見物席から食い入るように私を見上げ歌っている彼らの目を、とても、まともにみつめられはしない。
喉元に熱いかたまりが突き上げてきて、私は半べそだ。(中略)私の涙に誘われたのか、こらえていた涙がいちどきに
溢れ出たのか、見物席の隊員たちはオイオイと男泣きに泣き出した。「同期の桜」。私の脳裏によみがえるのは、
あのときの、恥も外聞もないといった特攻隊員たちの子供のような嗚咽である。


戦争が終わり、GHQが乗り込んできたところから始まる後編。こちらのハイライトもほぼ巻末。
執筆時、結婚二十一年目を迎えたというご夫妻の、海よりも深い夫婦愛がしのばれる箇所です。

もし夫がさきに死んだとしたら、私は夫を四角く冷たい墓石の下に埋めこんでしまうつもりは毛頭ない。
そんなことをするくらいなら、我が家の庭で毎春美しい花を開く、夫の愛する白木蓮の下にでも眠っていて
もらうほうがまだマシである。(中略)夫の骨を、墓石の下に埋めずに、いったいどうするつもりか?といえば、
私は生前彼が愛した李朝の壺にでも押し込んで、いつも私のかたわらに置いておく。(中略)
私のようなトンマな女房を、かげになりひなたになっていたわり続けてくれた大切な夫の骨を納めるからには、
女房たるもの一世一代のフンパツをしなければ女がすたる。

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Author:nonogu
永香農園
福岡県福津市上西郷地区で農業をしています。夫婦二人にパートさん3人、後継者候補のアルバイト男性一人に研修生一人。主な栽培品目はアスパラ、ネギ、ホウレンソウ、ニンニク、里芋、落花生。

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